古川和男先生(範士八段)へのインタビュー~ベトナムの剣道発展のため②~
審判員は試合者の見本であることを自覚すること
筆者:「大会の全体的な感想を教えてください。」
古川:「まずは審判についてですが、大会の良し悪しは審判にかかっています。良い審判の下では良い試合が行われます。そして審判の立ち振る舞いが試合の参加者の態度にも影響します。現地にいる日本人の指導者というのは剣道の専門家ではない方も多くいると思います。みなさんは企業や外務省、学校などで働きながら空いた時間で剣道を教えています。もちろんみなさんが一生懸命教えているのは分かっています。しかし剣道の専門家として審判講習会などの指導を受けていないので、審判として所作、態度には改善の余地があります。」
筆者:「例えばどんなところでしょうか。」
古川先生:「例えば審判員は審判をしていない時、椅子に座って待機しているときも、背筋を伸ばし、きちっと座って待機しているよう日本では指導されます。試合中の審判技術はもちろんですが、試合以外のところでも審判は指導者として選手の見本とならなければなりません。そのあたりについても大会二日目の審判会議の際、現地の先生方に審判の所作事について細かく申し上げたら、一日目と比べて格段に審判の態度が良くなりました。それに続いて選手の試合の態度も良くなりました。みなさんには今後も、良き指導者を日本から定期的に招くなどして、剣道のレベル、審判のレベル向上に励んでほしいです。」
正しい剣道を学んでほしい
筆者:「剣道の技術的なところとしてはいかがでしょうか?」
古川:「試合を見ていて気になるのが、【かすみの構え】です。
この構えは打たれたくない、試合で勝ちたいという気持ちから生まれる良くない構えです。日本の学生でも多いのが現状ですが、残念なのが日本に留学した海外の学生ほど、日本でたくさんの事を学ぶ反面、試合中心とした日本の学生剣道の悪い習慣も身に付けてしまっているように思います。この大会でもかすみの構えに近いものが多く見られました。もしこのような指導を現地の先生がしてしまっているのなら残念です。かすみの構えは正しい剣道からは外れていることを伝えなければなりません。」
筆者:「おそらく現地の先生は教えていないとは思いますが、指導者が足りていないのが現状だと思います。」
古川先生:「そういった状況を解消するためにも、日本から専門家の先生を招いて正しい剣道を学ぶ機会を多く作っていってほしいですね。」
インタビューのまとめ
古川和男先生は
「剣道の礼法」
「所作事」
「ルール」
を徹底したうえで
「基本技」をしっかり身に付けることを強調していました。
先生のご指導が現地の剣道家に伝わり、ベトナム剣道発展のために役に立つこと心から願います!