社会で活躍する剣道家その1 木和田大起先生(教士7段)

今回のブログから続けて、1月20日に行われた香川県のイベントにいらっしゃった先生方のインタビューを載せていきます。剣道の試合のみならず、社会で活躍し、貢献している先生方の想いをまとめ、みなさんにお伝えいたします。

今回は木和田大起先生(教士7段です。)

木和田大起選手(教士七段)三重高校→中央高校→大阪府警 2012年全日本剣道選手権優勝 2009・2012年世界選手権優勝

剣道はじめたきっかけ

筆者:本日はお忙しい中ありがとうございます。まず初めに先生が剣道をはじめたきっかけって何だったんでしょうか。

木和田先生:私が剣道を始めたのは小学校1年生の時だったんですが、私がけっこういたずらっ子で親も親戚も手を焼いていたので、その有り余るパワーを何とかさせようということで剣道を始めることになりました。田舎だったので当時スポーツと言えば野球かテニスか剣道ぐらいしかなくて、叔父が野球のチームの監督だったんで入れてもらおうと思ったんですけど、「お前はチームの和を乱すから」という理由でいれてもらえませんでした笑。それで剣道になったんです。

筆者:それは意外ですね。今の先生の姿からは想像もつかないです。

木和田先生:しかも私は中学1年生のとき一回剣道部をやめてるんです。いわゆる反抗期ですね。だから中学1年のとき半年ぐらい練習をまったくしてないんです。

筆者:どうやって剣道部に戻ったんですか?

木和田先生:剣道部の顧問の先生が人格者だったんですね。どうにかして私を剣道部に戻すために「木和田、メンバーが足りないから一度でいいから試合に出てほしい。」と頼んできたんです。もちろんメンバーが足りてるのは知ってましたが、そこまで言うならと、一度だけと思って試合に出ました。そしたら大将にさせられちゃって

筆者:それで試合はどうだったんですか?

木和田先生:そしたら当時の県のチャンピオンに勝って優勝しちゃったんですね。全然練習してなかったのに

筆者:それってめっちゃすごいですね。

木和田先生:その時、先生、両親、周りの人が初めてってぐらいすごいほめてくれたんです。今まで悪ガキで怒られてばっかりだったのが。それが本当にうれしくて、がんばろってなりました。

筆者:先生はけっこうやんちゃだったんですね。

大学から警察へ

筆者:先生は中央大学に進まれましたけど、中央大学を選んだ理由は何かあったんでしょうか。

木和田先生:中央大学から推薦を頂いたからですね。推薦を頂いた時点では、7番手、8番手ぐらいのようでしたが、入学前に新入部員総当たり戦をして、二位になって、将来の副キャプテンになることが決まりました。

筆者:大学卒業後は大阪府警に奉職なさいましたが、警察を選んだ理由は何かあったんですか。

木和田先生:当時大阪府警の剣道部の師範を務めていた石塚美文先生にお声をかけていただいたのがきっかけです。やはり剣道で日本一になりたいという目標があったので。

筆者:大阪府警の特練の稽古はどんなものでしたか

木和田先生:とにかくきつかったです。練習が今までの比じゃないほどきつかったです。仕事もこなしていくわけですが、最初の1、2年は本当よくわからなかったですよ。金曜日の稽古が終わると「やっと終わったー」って感じでした。

結果を出すまで、出すために

筆者:結果を出すまでにどのぐらいかかったんですか?

木和田:まず試合に出るまでに2年かかりました。1年目の夏に近畿地区の警察剣道大会があったんですが、もちろんそのときは出れず、生まれて初めて場所取りや飲み物を運んだりだとか、マネージャー役をしました。それまでの人生は一度もレギュラー落ちしたことがなかったんです。その時、ほかの県の代表には自分の同期とかがもう出てて、その時本当にくやしいと思いました。もちろん大阪府警は他の県より層が厚く、一年目で出れる人なんていないから、私がレギュラーじゃなくても誰も気にしませんが、私はその時本当にみじめだと思いました。

筆者:先生にもそんな時期があったんですね。その後先生は強くなるために何をされたんですか。

木和田:まず、体のあたりやパワーが先輩方に比べ弱かったので、練習と仕事をこなしながらジムに通いました。それから大阪の柔道特連の同期に、体を強くする方法をいろいろ教わりました。

筆者:すごい執念ですね。やはり日本一になるというのは並み大抵ではないんですね。

タイトルを取った者の責任

筆者:先生は現在、仕事のかたわら少年剣道のご指導やイベントに多数ご協力くださっていますが

木和田先生:これはタイトルを取ったものの使命だと思うのですが、私は幸運にも全日本でタイトルを取れました。すると、子供たちは私の話を聞いてくれるんですね。日本一になった先生だということで。私も話すの好きですし、私が学んできたことを次の世代に伝えて、次の世代を育てていく使命があると思っています。

筆者:なぜそこまで一人一人しっかり見るのですか?

木和田先生:自分の頭で考える子になってほしいからです。特にこれからの時代、自分の頭で考え、自分なりの答えを見つけられるようになっていかないといけないので。

子供たちに伝えたい事

筆者:先生は普段は警察官の仕事でお忙しい中、こういう剣道のイベントに出ていかれるモチベーションは何でしょうか。

木和田先生:休みを使ってイベントに参加したり少年たちに指導するのは体力的にはしんどいですが、精神的には本当にリフレッシュになります。それからこういうイベントを通してしか出会えない人もいます。こうやってイベントに出て、新しい出会いがあるのも楽しみの一つです。

筆者:最後に子供たちに伝えていきたいことは何でしょうか。


木和田先生:まずは大きな夢を持つことです。夢というのは本当に頑張らないと届かないものです。日本一、世界一、その道の一流、大きな夢を持つと努力する道筋が見えてきます。すると実現するために頑張ることができます。そしてその道筋で出会った人たち、夢を達成していないときから自分を支えてくれた人たちを最も大切にしていくことです。例えばオリンピックで優勝すれば空港での出迎えは華やかですよね、でも負ければ迎えに来てくれる人は両親や親しい友人だと思います。そういう人を最も大切にしていってほしい。たまに成功すると自分を支えてくれた人をないがしろにする人がいます。するとその人は信頼を失います。信頼は一度失ったら、もう二度と手に入りません。お金はなんとでもなりますが、信頼は戻らないんです。お世話になった人とは縁を切らず、定期的に連絡を取り合い、感謝の気持ちを忘れないことです。

夢の一歩は夢をかかげること

かなえるために努力すること

努力する過程で支えてくれた人への感謝を忘れないこと

当たり前のことのようですが、それを続けていくのは難しいことです。

先生の思いが子供たちに伝わって、次世代を担う子供たちが育っていくことを願います。